事件の報道


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【夕刊フジ編集局から】ジャーナリスト江川紹子も追い続けるJR新宿駅・突然痴漢容疑で自殺
(ZAKZAK 2010.12.14 より転載)


昨年12月10日深夜、忘年会シーズンで混雑するJR新宿駅で突然痴漢の容疑をかけられた私大職員、原田信助さん(当時25)。“被害女性”の仲間から激しい暴行を受け、警察でも一方的な取り調べを受けた後、翌早朝に自殺してから、1年が経ちました。

警視庁は今年1月、亡くなった信助さんを東京都迷惑防止条例違反容疑で送検し、被疑者死亡のまま不起訴処分に。つまり、痴漢事件として完結させました。

しかし、女性からは被害届が出ておらず、身元がしっかりしていて何の犯罪歴もない被疑者はすでに亡くなっている。もともと「すれ違いざまにコートの上から女性の腹を触った」といった容疑自体が極めて曖昧。条例違反での立件は、手続き上問題なくとも「正当な事件処理」とは到底言い難いものです。

原田さんの母親は、“被害女性”の仲間の男数人による原田さんに対する暴行事件を告発しましたが、警視庁は2度に渡り不受理に。

一方、今年5月には東京地検がこの訴えを受理し、10月には、原田さんとみられるスーツ姿の男性が事件当夜、学生風の男2~3人に囲まれ執拗に暴行を受けていたことを駅員に通報した女性が地検に名乗り出ています。

検察の“正義”の執行に期待が高まる中、動画配信サービス大手の「ニコニコ動画」は11日、事件を再検証し、情報提供を呼びかける1時間の特集番組を放送。原田さんの母親やジャーナリストの江川紹子さんとともに、当初から事件を追い続ける夕刊フジ記者も出演しました。

4万5000人が視聴した番組では、痴漢容疑を否認し、暴行被害を訴える原田さんが、警察官に詰問される様子を録音した肉声も公開しています。前途ある優秀な青年の人生を絶望させた真相は何だったのか。ぜひ一度ご視聴ください(「ニコニコ生放送 原田」で検索)。




日刊サイゾー 2002.12.06~
「短期集中連載」:発生から1年「新宿駅痴漢冤罪暴行事件」の闇(1~4)
 





(1)痴漢冤罪で命を絶った青年が録音していた「警察の非道」

(2)なぜ、JRは「息子の死」の真相を追及する母の想いを踏みにじるのか

(3)事件を密着取材していた民放キー局取材班の不可解な動き

(4)追跡レポートをOA直前に封印したテレビディレクターの謎の行動



目撃者現れる 痴漢容疑の大学職員自殺、“被害者”仲間から激しい暴行 (産経ニュース 2010.11.6より転載)

昨年12月、JR新宿駅で 痴漢の容疑をかけられ、警察からの取り調べ後に自殺した私立大職員がいる。名前は原田信助さん=当時(25)。えん罪の指摘があるなか、事件当時、被害を 受けたとされる女性の男性仲間から、原田さんが激しい暴力を受けた可能性があることも判明している。原田さんの母親は今年4月、被疑者不詳のまま原田さん が受けた暴行の被害届を東京地検に提出。最近になって目撃者が現れ、事態は新たな展開を見せ始めた。(夕刊フジ)

原田さんは昨年12月10日深夜、宇宙開発研究機構(JAXA)から転職した私大の歓迎会の帰り、JR新宿駅の階段で、すれ違った女性から「腹を触られた」と訴えられた。その直後、階段下で女性の男性仲間から暴行を受けたとされる。

駅員の連絡で駆けつけた駅西口交番の新宿署員に原田さんは任意同行を求められ、同署へ向かった。そこで、身の潔白と暴行の被害を主張したが、受け入れてもらえなかったという。
翌11日未明、いったん釈放された原田さんは、その足で大学時代に使い慣れた地下鉄早稲田駅まで赴き、線路に飛び込んで自殺した。警視庁はその後、“被害女性”の証言、駅員の証言、防犯カメラの映像をもとに、原田さんを東京都迷惑防止条例違反容疑で書類送検。東京地検は被疑者死亡で不起訴処分とした。

えん罪を信じる原田さんの母親、尚美さん(54)は当時、原田さんが受けた暴行について、被疑者不詳のまま新宿署に告発。だが、2度にわたって受理されなかったため、今年4月、改めて東京地検に告発し受理された。

地検の捜査過程でこの9月、新たな動きが出た。事件に遭遇し、駅員に通報した会社員の女性(40)が名乗り出て、目撃した詳細な内容を「陳述書」にまとめて地検に提出したのだ。

本紙の取材に対し、この女性がこう証言する。
「事件後、現場を通りかかった際、お母さんがポスターを持って立たれていたのですぐに声をかけました。原田さんとみられる男性は、工事中の駅階段の壁を背にしてうずくまり、私服で少し脱色した今どきの感じの髪形の学生らしき2-3人が取り囲んでいました」
「そのうち1人が、うずくまった男性の胴体付近を足で何度もけりました。思いきりけっている様子で、仲間の3-4人が、2-3人に『もうやめとけよ』と止めていましたが、けりやむ様子がなかったために、駅員を呼ぶことにしたのです」
実は事件以降、尚美さんが開設したブログにも《男性A(茶髪)が1人の男性Bを羽交い締め》など、同様の意見が実名で複数寄せられている。

尚美さんは、「(原田さんに暴力をふるったとされる)加害者に対し、あまりにも多すぎる(一連の)事件の疑問点を問いただし、息子の名誉を回復したい」と訴える。
陳述書を提出した先の女性は「こんなことになるなら、通報後に現場に戻れば良かった。警察に対し、現場に向かった駅員が、原田さんを暴行の被害者と証言しないのは納得いかない」と話す。
捜査関係者によると、原田さんに暴行を加えたとされる男性の1人は、東京地検の事情聴取に「暴行はしていない。痴漢をつかまえただけ」などと話しているという。




息子の無念を…痴漢と呼ばれ自殺、母が目撃者捜しビラ配り
(ZAKZAK 2010.05.06より転載)

昨年12月11日早朝、25歳の男性が自殺した。男性が死に場所に選んだのは、大学時代に通い慣れた地下鉄早稲田駅のホーム。男性は前夜、JR新宿駅構内で酒に酔った女子大生と男子大学生2人に「痴漢」と呼ばれて激しい暴行を受けた後、警察に連行され、夜通し“被疑者”として事情聴取を受けていた。突然、1人息子を失った母親はいま、新宿駅で目撃者捜しを続けている。

「息子は11日の早朝に警察から解放された後、1時間近く都心をさまよっていました。極度の近眼だったのにコンタクトレンズを外しており、ほとんど視界はなかったはずです。息子は英語の勉強のために普段からICレコーダー持ち歩いていましたが、当日も事件直後からスイッチが入ったままでした。その中には、息子の泣き声や聞き取れないつぶやきだけが入っていました」

母親の原田尚美さん(53)は、自殺した長男・信助さんの26歳の誕生日にあたる先月30日、事件があった新宿駅で夕刊フジの取材に応じた。尚美さんはほぼ毎晩、新宿駅西口などで暴行の目撃者捜しのためにビラを配り続けている。だが、2時間近く声をからしても、受け取るのはせいぜい4-5人だ。

信助さんは2008年に早大商学部を卒業後、宇宙開発研究機構(JAXA)に入社。1年半後の昨年10月、都内の私大職員に転じた。

仕事に慣れ始めた12月10日午後11時すぎに事件は起きた。職場の懇親会の帰り、乗り換えのため新宿駅の15番線と16番線(山手線池袋方面と中央・総武線三鷹方面)のホームに向かおうと西口の北通路代々木側階段を上った際、すれ違った女子大生に「腹を触られた」と訴えられ、仲間の男子大学生2人に階段から突き落とされた後、馬乗りで暴行を受けたのだ。

「その後、息子は新宿署に任意同行を求められました。その様子はすべてICレコーダーに録音されています。息子は、自分は理由もなく暴行を受けた被害者だと訴えましたが、痴漢の容疑者として取り調べられました。息子は担当の刑事さんに、『私はこれから、ニュースでよく聞く“痴漢冤罪被害者”として人生を歩まなくてはいけないのでしょうか』と訴えていました」

信助さんは翌朝の午前5時45分、再び事情聴取に応じる確約書を書いたうえでようやく解放された。だが、家には帰らず、新宿駅のコインロッカーに鞄を預けた後、JR中央線で東京駅へ。さらに地下鉄東西線で早稲田駅へ向かい、午前6時40分、早稲田駅で1本後の電車に身を投じた。新宿署を出てからわずか55分後。東京駅地下通路の防犯カメラには、やつれきった様子で視点も定まらずフラフラと歩く信助さんの姿が写っていた。尚美さんはやりきれない表情で語る。

「警察は死んだ息子を送検し、被疑者死亡で不起訴処分となりました。でも、息子は絶対に痴漢はやっていません。大学時代の友人やJAXAの元同僚、大学の同僚や先生方も全員、『原田くんは絶対に痴漢なんてしない』と涙を流してくれます。警察は大学生たちの情報を一切教えてくれませんし、東京地検も不起訴記録の不開示を決めました。私は息子の無念を晴らすために真実を明らかにしたいのです」

尚美さんは駅頭での目撃者捜しと同時に、これまで触れたことのなかったパソコンやインターネットを独学で学び、ブログを開設。信助さんが使っていた携帯電話を連絡先として情報提供を呼びかけている。




痴漢“無実”証明できぬまま自殺 息子信じる母、目撃者捜し続く
(産経ニュース 2010.5.19)

昨年12月、ある青年が痴漢の疑いで警察の事情聴取を受けた。東京・JR新宿駅で「女子大生の腹を触った」という疑いだ。青年は強く否定したが、聴取の翌朝、自殺。その後、痴漢容疑で書類送検され、被疑者死亡で不起訴となった。一人息子を失った母は訴える。「息子は無実なのに、このままでは永遠に『痴漢』のレッテルを張られたままです」-。(千葉倫之、福田涼太郎)

「(痴漢容疑は)私はまったく関係ありません。どれだけ憔悴(しょうすい)しても、状況が変わっても、関係ないものは関係ない」

昨年12月11日未明、警視庁新宿署。私大職員の原田信助さん=当時(25)=は捜査員に必死で訴え続けた。遺品の携帯ボイスレコーダーに聴取での原田さんの肉声が残っていた。

「事件」があったのは前日の10日午後11時過ぎ。同署によると、新宿駅構内の通路をホームへ歩いていた原田さんは、男性2人、女性1人の大学生グループとすれ違った。ともに酒を飲んだ後だった。

しばらくして女性が「おなかを触られた」などと訴えたため、男性2人が引き返し、原田さんを「犯人」とみて、1人がつかみかかった。警察官や駅員も駆けつける騒ぎとなった。

「いきなり殴られ、階段から引き落とされ馬乗りで床に頭を打ち付けられた。私は暴行の被害者です」

新宿署での聴取で、原田さんは一貫して主張。レコーダーには最初は激しい口調だったが、次第に憔悴し、つぶやきや泣き声をあげる原田さんの様子が収められていた。

聴取は未明まで続き、「暴行を受けた件で呼び出しがあれば」再び出頭すると確約書を書いた原田さんは午前6時前に署を出た。そして6時40分、新宿区の地下鉄東西線・早稲田駅のホームから電車へ身を投げ、死亡した。



「息子は聴取の途中まで、痴漢の疑いをかけられたことにも気付いていないし、目撃者捜しや防犯カメラの調査も頼んでいる。自分で110番もしている。痴漢扱いされて絶望し、命を絶ってしまった」。原田さんの母、尚美さん(53)はこう訴える。

実は、新宿署は事件後、尚美さんに「容疑は晴れた」と説明していた。しかし、今年1月29日に一転、原田さんを痴漢(東京都迷惑防止条例違反)の容疑で書類送検。被疑者死亡で不起訴となった。

同署によると、女性は触ったという人物の顔を見ていない。唯一の物証は防犯カメラの映像だという。「女性の『(誰かに)触られた』という証言は信用できる。すれ違った瞬間はカメラの死角だが、証言と同じタイミングで触れる人は原田さんしか写っていない。証言と映像で複合的に判断した」と説明する。

一方、尚美さんは「暴行事件が一方的な言い分で痴漢事件にされてしまった。カメラの映像を開示してほしい」と反論する。

なぜ「容疑は晴れた」との説明を覆したのか。同署は「当時はカメラを確認する前だった」と釈明し、こう話す。「本来は立件するような事案ではなかった。母親の『暴行』との訴えや、相手の女性の気持ちも考慮した結果、白黒つけるべき話になった」

尚美さんは、大学生側を被疑者とする暴行容疑での被害届と告訴状を同署に出したが、「(大学生の行動は)痴漢の行為を引き留める行為の一環」(同署)として、不受理となった。



「目撃者を探しています」。5月中旬、午後10時過ぎの新宿駅。現場近くの通路にビラを掲げる尚美さんの姿があった。3月初めから毎夜のように続けている。目撃証言を寄せてくれる人も現れ出した。

「真実を明らかにして、息子の無念を晴らしたい」

原田さんは平成20年に早稲田大を卒業。JAXA(宇宙航空研究開発機構)を経て昨年10月、私大職員に転じた。事件当日は新しい職場の歓迎会帰りだった。

「明るくまじめな勉強家」と友人は口をそろえる。大学サークルの同級生の男性(25)は「親思いで、就職が決まって『これで母を安心させてあげられる』と話していた」。先輩の女性(28)は「誠実な人。あらぬ疑いをかけられ、本当に悔しかったんだと思う」と話す。

「真実」はどこにあるのか。原田さんはもう弁明できない。「事件のために仕事をなくしても何でもよかった。せめて生きていてくれたら…」。尚美さんは言葉を絞り出すと、涙を落とした。